金型管理

品質システム

製造業では、その製品そのものを作り出したり、内部の構成、そして供給されるパーツ類などにおいても形を作るという工程の中で金型を取り扱うことは非常に多く、金型の仕様と管理についてはモノづくり品質を語る上で重要な要素をつかさどるひとつと言えます。
ここでは、その金型仕様について、単なる寸法や材料の選定といった設計技術面でのテクニカルな考え方ではなく、その前提となる品質管理上の関係性に焦点を当てて、重要なポイントをいくつかご紹介します。

意外と当たり前なことでも、品質マネジメントシステムとしての考え方の一助となりますので、モノづくりの基本的な考え方として理解しながら仕様管理をしていただけるとありがたいと思っています。

製品要求と金型仕様の関連性

まず最初に需要なポイントは、金型仕様は「製品品質を作り込むための管理文書」であることです。そして、これらの仕様は、後工程(成形・加工・検査など)で品質を保証するための前提条件となります。
あとで問題が起きると、その対応・対策にコストや工数が大きくなってきます。そうなる前に金型の作り込みの段階でしっかりとした品質面での考察が重要となってきます。
これらは、製品図面や品質要求が、どういった金型仕様で担保されているのかを整理しておくことになります。

必要とする観点として、

 ・寸法精度
 ・外観(ヒケ。バリ、キズ)の管理条件
 ・機能部分(勘合部、気密性など)
 ・バラツキ耐性

重要特性面(CTQ:Critical to Quality)での考察が必要です。多くは顧客要求に沿った形で検討していきますが、必ずしもそれだけではなく、自分たちのモノづくり観点での重要特性を示すことも要求品質を確保するためには必要となってきます。そのためには金型側での対応として

 ・型構造
 ・押さえ方式
 ・ゲート位置
 ・冷却設計

などの対策により製品実現を図っていきます。
意外にもこれまで見てきたサプライヤさんでは、「昔からこうしている」「金型設計屋さんに任せている」などをよく聞きました。結果的はその実態が見えていないケースも良くあるようです。みなさんのところはそうでないことを信じたいですが、「仕様書はあるので問題ない」といって中身がスカスカになっていないか今一度チェックしておきたいところですね。
ここで大切なことは、品質要求⇒金型仕様⇒成形安定性⇒製品品質の確保⇒不良防止につながることを意識していくことで、金型仕様が構築されていきます。金型仕様で品質の8割が決まるとも言われています。このため顧客要求があるのであれば、その実現に向けた仕様設計プロセスが行われているかチェックしながら進めていきましょう。

寸法精度を管理するための金型仕様

少しテクニカルな面にも踏み込むかもしれませんが、出来栄えの寸法を確保するためには、金型が「狙い寸法を再現できる構造」であるかを検討しなければなりません。

 ・重要寸法に対応する型部位の公差設定
 ・可動部やスライド部のガタ管理方法
 ・繰り返し精度を考慮した構造(止まり、基準面)

などの適切性が、加工者任せであったり、調整前提で作業するような作り込みであると安定した品質は得られません。これらの検証結果を記録として残しておき、確実な金型設計プロセスを組み込んでいることを証明できるようにしておきましょう。品質マネジメント監査では、この点は必ずといってチェックされる項目となってきますので注意が必要なポイントです。

外観品質を保つための仕様

外観は表に出る重要なポイントとなりますので、もっとも市場クレームなどに直結しやすいことが想定されます。このため次のような観点は最低限考慮しておく必要があります。

 ・パーティングライン位置の考え方
 ・バリ対策
 ・エジェクタピン位置と外観影響の考慮
 ・表面粗さ、シボ仕様の管理基準

特に、パーティングラインは強度や耐久性にも関わってきますので、なぜここに線が来るのかなどの説明ができることが重要となります。そしてその強度設計的もしくは信頼性関連での形状変化などが狙った仕様に基づいているかの検証ができることが重要です。また、バリについては組み合わさる構造やバリが落下することへのリスクなども含めると、どこまでが許容度なのか追加工的な工程が必要となるのかなど単に外観だけにとらわれない品質への影響が大きい観点となります。

成形・加工ばらつきを抑えるための設計配慮

特に成形においては、加工条件の設定において、その条件設定的なことはテクニカル面に依存することでもありますが、品質管理面で考えると、これら条件がその条件依存を減らしつつ、シンプルにすることで安定生産することを前提に考慮することが大切です。必要な特殊条件も当然ながら出てくることは有ってもこれらが重要特性として管理できる項目となっていることにも目を向けつつ、事例的には下記のような検討をしておくべきです。

 ・冷却回路の設計思想(温度ムラ防止)
 ・ゲート方式や位置の選定理由
 ・ガス抜きやエア逃げ構造
 ・メンテナンス性を考慮した寸法再現性

つまり条件出しを行っていく過程で、無理やり合わせ込むような金型は非常にリスクが高いことを理解しておきましょう。
あと、出来栄えから構造寸法を合わせ込む「現合」などは良く使われる手口でもありますが、これらには、要求仕様との相関が取れることが前提であり、その考察結果は必ず記録として残したうえで効力があることを証明(例えば顧客との整合など)しつつ、都合で処理するのではなく根拠を明確にして管理することです。

金型寿命や経年変化を見据えた品質管理

ここで重要なポイントは「初期OK」であっても「長期に安定」していることが大切です。このために

 ・使用材質と選定理由(耐摩耗性や耐食性など)
 ・摩耗部品の交換可能設計
 ・寿命想定ショット数
 ・寸法変化が出る部位の管理方法

これらは、品質マネジメントシステムなどでも根拠を伴う視点で評価されることが多いポイントですので、金型設計としてのテクニカルな面だけでなく、安定して生産できることを考慮した金型仕様となっているかを必ずチェックしておきましょう。

これまでの経験事例では、摩耗やへたりの出る場所が十分に把握できていないことや経年で起こる品質変化を考慮できていないことが多く見受けられました。その多くがやってみてから考えるといった思考で問題を発するケースが多かったと感じますが、これらは可能な限りリスク考察として、「何ショット後に何が起きるのか」を考えて設計段階で考察しておかないと問題が露出する、もしくは、やってみるとしても、出来栄えに注意して考慮するポイントを細目にチェックするようなセンシングが機能していないことが教訓として挙げられているのではないかと思われます。

このように予防保全的な考察を根拠をもって臨んで管理することが最も品質管理上必要となります。

金型メンテナンスと品質との関係

あたりまえ的なことですが、設計・仕様段階で注意しておく点で「メンテナンスのしやすさ」=「品質維持力」であることを認識して仕様管理しておきましょう。その点で事例ですが

 ・清掃や点検が必要な部位
 ・調整可能範囲と調整禁止範囲を明確にする
 ・メンテナンス不良時に起こる品質リスク

をあらかじめ考慮しておき、製造現場の「勘頼み」にならない設計思想が説明できるような仕様を構築しておくことです。プロの技も必要でしょうが、品質マネジメント的にはそれ以上に、誰でもいつでも、その通りに品質が維持できることが大切ですので、これらの観点の重要性を再認識して仕様管理できるようにしましょう。
余談である一方で的を射ていると個人的に思っていますが、結果論的な先人の知恵も含めて考察すると、「メンテしずらい金型は、たいがい品質が守れない」ということになりそうです。

金型仕様変更時の品質管理ルール

これは、変更品管理という視点で、管理上指摘されやすいポイントのひとつです。変更品管理は何も金型にこだわったことではありませんので別の機会にも示しますが、重要なポイントはリスク管理です。

 ・金型改造や仕様変更時の影響評価項目
 ・製品再検証が必要な条件
 ・なぜその変更が必要かの根拠と目的
 ・変更履歴管理方法と承認

影響面で考慮すると単に製品としてのカタチではなく、製造面での影響、信頼性面での影響、メンテナンスとしての影響などを検証結果として記録した形で変更した際の変化を確実に洗い出せるプロセス(システム)が整っているかが大切です。これらは常に変更=品質リスクとして「リスク管理」の対象となっていることに注目しておきましょう。

不具合・過去トラブルの反映

こちらは品質管理の側面で、実績から学習するフィードバックを大切にする観点から効果的な管理であり、かつ重要な項目となります。

 ・過去の不具合事例の管理
 ・今回の金型仕様での再発防止ポイント

過去トラが常に最新で管理されて、かつ、それらが金型仕様にフィードバックされているプロセスが構築されていることが重要となってきます。作ったら作りぱっなしでなはく、これらのレビューによる次なる思想構築として経験が活かされていることを明確にすることで、単純な「勘」「コツ」からの脱却を図り、安定した品質を保ち続けるための手段としてのルール作りと実践を推進していきましょう。

こらによって、「なぜこのような仕様なのか」が明確になり、説得力が格段に上がった仕様構築となることでしょう。

まとめ

金型仕様は、製品品質要求を設計段階で作り込み、成形条件や作業者に依存しない再現性・安定性を重視した品質保証型の金型仕様として構築することが大切です。そのためには

 ・金型屋向けだけでなく、品質方面や製造方面へも考慮できる内容
 ・決めた理由が書いてある
 ・不良を想定し、未然防止の視点がある
 ・変更や劣化、ひとの入替わりに耐える内容

というのが品質管理面での金型仕様の管理ポイントと言えます。このような観点を軸にした金型仕様の管理を推進していくことを推奨します。

いかがだったでしょうか。モノづくりの観点でもさらに詳細な技術論は個々の製品によって、それぞれのプロフェッショナルな視点が出て来るかと思います。ここでは、そこまで踏み込むにはより具体的な製品とそれを構築する金型の考察が必要となってきますが、全体的な考え方としてこれらの考察はベースでもあり、出来上がった金型仕様のチェックポイントとなりますので、常にチェックしながら金型の仕様構築と管理ができるような体制を築き上げていきましょう。

今回は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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