APQP(新製品開発計画)

品質システム

APQPはAdvanced Product Quality Planningの略です。

これはいわゆる新製品開発計画というもので、モノづくりをしていく中では、企画、設計、工程、検証、生産という主軸の中での活動を段階的に管理することで品質を担保するといったものです。この計画自体が、モノづくり品質と言っても過言ではありませんが、あまり難しく考える必要はありません。

ここでは、これらの活動のポイントを簡単にまとめてみました。ある意味最低限のやるべきことになりますが、これらを学習しながら、開発計画とはどのようなものなのか、また品質はどのような形で保たれるのかを概要として理解して行きましょう。

まえがき

APQP自体が、品質マネジメントシステム(QMS)の中で定義されていることが多い(自動車向QMSのIATF16949ではコアツールとして明記)ので、基本的な考え方を理解しておけば、いろいろなモノづくりシーンの中で活用できます。また、ここで登場する用語やトピックは、このAPQPの柱につながるサブシステムとして、詳細な活動に踏み込むことが必要となってきますが、話を複雑化(脱線を可能な限り避け)することなく、それらの詳細は別途個々のトピックで活動を整理して行きましょう。

このため、このAPQPはあくまで計画がベースで計画をしっかり立て、さらに予実管理を行うことを主眼として活動することにフォーカスが当たっていることを認識しておきましょう。

APQPの必要性

APQPがなぜ必要かと言うと、この開発~量産の計画は時間軸も大切ですが、その進行の適切なタイミングで適切な仕様・要件定義・レビューなどのイベントによりステップを踏みながら「進めて行く&エビデンスを残す」ことが、製品トラブルを未然に防ぐための大切な手法である、と言った考え方によるものです。

その際に、最低限必要なのは、「設計⇒試作⇒工程⇒生産」を段階管理していくことが重要です。そして、後工程で直すのではなく、「前工程で潰し込む」といった考え方と姿勢が必要です。

今回は初学者でも簡単に、また管理者なら是非しておくべき内容として、これらを簡潔にまとめて行きます。

APQPをシンプルに説明

日本語では新製品開発計画と呼ばれることを説明しました。計画というからには、ガントチャート的なものをイメージするかも知れませんが、それはそれで問題ありません。ただし、ここでは、最低限の5つのステップとしてのフェーズをしっかりと完遂し、次のフェーズに移行することを念頭に、これらのホールドポイントを記録しながら(各フェーズのまとめの意味ですね)モノづくりを進めることが重要です。

簡単に言うと、各フェーズについて「失敗しないための段取り表」となりうる管理をしていくこととなります。
(スケジュール管理はその各ステップ内のアクション/タスクについて個々にクリティカルパスを監視するなどといったフォローアイテムの推進は必要となります)

簡易的には次の5つのフェーズを各ステップ毎でのアクションとして取り扱い、モノづくり品質を整合していくこととなります。

  フェーズ 内容
企画 顧客内容の理解と品質計画設定
設計 図面・仕様を作成、製品実現性の評価
工程 作り方、検査内容を決める
検証 試作して試運転しながら確認する
生産 本格量産そして継続的改善

このフェーズに沿って開発計画を立てていくことが基本ベースとなります。詳細は後で見て行くことになりますが、その前に各フェーズで必要となる考え方になるレビューやリスク管理について簡単に説明していきます。

レビュー

簡単に言うとレビューとは、これまでやってきたことが、「それでいいのか」「次に進んで良いのか」を確認する関門です。

営業/開発的なものでいうと、製品のコンセプトとしてそれでいいのか、お客様の要望には応えているのか、過去の問題はクリアしているか・・・などいろんな関門をチェックしていくことになります。

同様に設計的な話であれば、これらを基に作成された図面が正しく描かれているか、作り方も考慮されているか、耐久性は妥当か・・・などもチェックしていきますよね。こういった各懸念点となりうるポイントを設計した本人以外にも専門的知識を有したメンバーならびに関係各部署のメンバーも交えて問題点を洗い出し、改善やリスクへの対処方法なども考慮しながら設計を煮詰めていくこと・・・これが「レビュー」となります。

工程設計の側面では、正しく製造できるかが当然の確認事項であり、それに加えて量産するに適切なリードタイムや検査工程を勘案しているか、どのような設備で十分な投資に見合うか・・・などもチェック要です。

そして、検査項目は、要求仕様と合致した検査内容や公差、しきい値となっているか、そして、安定生産できる実力が工程能力として確保できていそうかなども確認していくことで、製品の品質が玉成されていくこととなります。

このようなプロセスやチェックゲートを通して、目的の製品と品質が出来上がるので、この「レビュー」というのは、なにも設計や取りまとめるデザインレビュー(通称DR)に限ったことではありません。ただし、デザインレビューはレビューの中でも重要なイベントであり、このレビューの良し悪しで製品の出来栄えが決まってしまうくらいの影響力があるイベントであることは間違いありません。このため、デザインレビューには、相当な有識者や過去のトラブル事例、そして顧客仕様、コスト面、デリバリー面での弊害も視野に入れながら、設計した内容の確認を行なっていく事になります。

また、問題点を洗い出して対処しておくことで、後工程やリリース後で発生する問題のコスト・労力・改修期間など大きく未然防止できます。かつ、クロスファンクショナルチーム間での製品の認識合わせが飛躍的に進捗します。

そして、このレビューは、各フェーズの各アクションの中でも頻繁に行われ、そして、フェーズの最後の段階では一大イベント=ホールドポイントとして次のフェーズに行っても良いかの判決みたいなもの(ゲームで言うと、各面のボスキャラ攻略みたいなものですよね)をクリアして次に進みます。

リスク

リスクとは、ある事象の発生確率とその危害の程度の組み合わせとして、主に悪いことを中心に取り扱われます。

これは不確実性と言われることもありますが、この世の中に100%確実なものはなく、何らかの因果関係の複雑な絡み合いで、その可能性はいろいろ変化して行きます。これをよくOODAの世界として唱える人も多いですが、ここではそのような難しい経済学のお話は置いておいて、人の行動も予定を立てて、そのように動くときもあれば、その場の状況、もっと言えばフィーリングで動くこともあるということです。そのため、状況は時事刻々と変化することを理解しておきましょう。
このため、図面が完成したから設計は完了したとか、製品設計のリスクが取り除かれた・・・ではありません。

リスクとは、その状況に合わせた起こり得そうなことを、製品のデザインの中に取り入れて置き、その対処方法として、適切な判断ができるように(つまり慌てず判断を見誤らないように)適切な設計を仕込んで最適化を図ることをリスクマネジメントとして対応していくことが大切です。

これを確実に実施するためにリスクアセスメントがあります。リスクアセスメントとは、リスクの大きさを計り、そのリスクが許容できるか否かを決定する全体的なプロセスを言いますので、想定できる危険性をあぶりだせる能力とキャリアが必要です。このステップとしては3ステップあります。

  1. リスク特定:リスク源、リスクによって生じる事象、それらの原因および起こり得る結果を発見・認識し、文書として記録するプロセス
  2. リスク分析:リスクの特質を理解し、リスクを算定することでレベルを決定するプロセス
  3. リスク評価:リスク及び/またはその大きさが、受容可能かまたは許容可能かを決定するために、リスク分析の結果をリスク基準と比較するプロセス

これらのステップでリスクを別の形で「移転」するのか、それとも「回避」行動をとるのか、もしくは「低減」できるレベルに持ち込むのか、最後は「受容」することでも問題ないと判断するのか、を検討することになります。

これらをシステマティックに捉えたツールがFMEA(Failure Mode and Effects Analysis=故障 モードとその影響解析)という形での評価となります。 FMEAには、設計FMEA(D-FMEA)と工程FMEA(P-FMEA)の2種類があります。この作成方法はそれだけでも記事になるので別の機会としますが、概念的というか本質としてはそれぞれ全く異なるものであり、次のように分けられます。

種類 主な実施フェーズ 目的
設計FMEA フェーズ2 製品がどう壊れるかを事前に検討しておく
工程FMEA フェーズ3 作り方で不良が出そうな原因を洗い出す

つまり、設計FMEAでは何が壊れやすそうか、工程FMEAでは、どのようなことをすると不良になるのかを想定して対処方法を決めておくということです。

各フェーズでの実施内容

あくまで、ここでは一例(というか最低限必要的な)としての内容となりますが、実施すべき内容を見て行きましょう。

フェーズ 名称 簡易説明 主なアウトプット
製品企画と定義 顧客要求を整理し、開発方向を決めることがポイント
・要求仕様の共有と対応方法の決定
・信頼性計画
・品質計画の策定
・要求仕様
・品質目標
・開発計画
・設計構想会議(コンセプト)
・コスト試算
製品設計および開発 製品仕様と図面を決める
・デザインレビュー、検証の完了
・部品、資材の仕様と設備要件の定義
・故障確率を評価するための設計モードと影響解析
・試作品作成のための管理計画の策定
・図面類
・デザインレビュー結果
・設計FMEA
・試験計画
・量産試作移行可否イベント
工程設計および開発 作り方を決める
・リスクを特定、対処するための工程FMEA
・生産現場での品質スペックの決定
・製品の仕上げと梱包要件
・工程フロー
・工程FMEA
・コントロールプラン
・作業標準(作業手順書含)
・レイアウト設計
・検査規格
・量産移行可否イベント
製品および工程の妥当性確認 試作/量産試験で実力を確認
・材料受入基準と生産プロセスの許容性と能力
・量産試作
・適用した生産性の有効性を確認するための検査方法確立
・量産へのブラッシュアップ
・治工具開発と調整
・PPAP
・工程能力
・信頼性試験結果
・量産試作評価結果
・量産準備計画書のクローズ
  フィードバック、評価、是正処置 量産ならびに生産後の改善と安定化
・工程バラツキの軽減
・製造工程の継続的改善
・製品の納入品質と顧客サービスの向上
・顧客満足度の向上
・量産移行、初期流動管理
・品質実績
・是正処置
・改善記録
・市場の声

 

これらをステップにして、各フェーズでの活動結果とレビュー結果を記録として管理することで、量産へ向けたシステマティックな開発が出来ているといったことをアピールすることになります。そしてAPQPを計画通りに実現することが、モノづくり品質の確実な進捗と品質マネジメントシステムが回っていることを証明します。

なお、計画はあくまで計画であって、そのすべてが必ずとも計画どおりに行くとは限りません。
レビュー時に問題が出て、設計の見直しが図られたり、信頼性が担保できない状況から設計の手戻りもあるかも知れませんので、計画を打ち出したマスタープランは常に状況に合わせてアップデートしていく必要性もリスクの中に取り込みながら、かつ顧客との対話の中で、常に柔軟なもしくは代替プランも展開しながら対応していくことが求められることを承知の上で進めていくべきです。

まとめ

これらが綿密に、かつ正しく、進捗させることで、無駄なコストを掛けずに効率よく開発から生産へ向けたフローを進捗させることができ、品質自体も安定し、競争力も増すモノづくりが実現できることを意味します。
こういう何かしら型にはまった活動って、いろんな制約もありそうですが、実はローマに近道がなく、まわりまわっても結果的に王道が最も安全で安くついたといった事は多くありがちで、このAPQP的な考え方こそが、QCDのバランスの中にもモノづくり品質を適切に確保し、後々後悔しないモノづくりにつながっていきます。
品質システムで謳われているくらいだから邪道ではないのです。

したがって、各フェーズで確実にレビューと検証、ホールドポイントとなるチェックゲートをおさえていく事で、よりよいモノづくりとなっていくでしょう。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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