今回は製品の仕様を定義する上で重要な「製品規格」について語っていきたいと思います。
また、それに付随し、製品全体のアウトプットのプロセスでもある「製品検査規格」との関係性についても併せてお話できればと思っています。
基本的には、ごく当たり前なことになってしまいますが、これらを理解していないと、製品のスペックとの同一性が保たれないことになってしまいます。意識を高く持っていないと品質の不正などにつながってしまう大切な概念なので常に正しく定義しておくことがモノづくりの世界として必要です。しっかり理解していきましょう。
製品規格とは
製品規格とは、自社で開発する場合は、設計構想などの段階やそれ以前の企画の段階、もしくは顧客からの依頼を受けてモノづくりを行う場合には顧客要求仕様が明確になるので、それに従った製品の仕様を制定する素性を示したものです。
基本的には、その製品が何であるのか、どのようなスペックであるものなのか、そして誰に届けるのか、それがユーザーにとって使いやすいものであるのか、安全であるのか、などを定義した文章であることが必要です。
概ね下記のように、製品にとって必要なスペックを盛り込んだ形として、モノづくりを進めて行く上での要求仕様をまとめて行き、製品としてのあるべき姿を明らかにしていきます。

これには、設計構想で行われた要求仕様や顧客からの要求仕様に合わせて、可もなく不可もなく全てを製品の素性として落とし込まなければなりません。このため製品規格には
・製品の外観や寸法、重量、ならびに必要ならば意匠関連
・動作特性
・環境性能を含む信頼性試験 など
によって構成されているケースが多いです。
ここで、外観や寸法、意匠関連は図面などを用いて、その加工方法などにも踏み込んでモノづくりとしての定義を行います。また動作特性などにおいても、どのような動作を行うのか、またどのような出力を行うのかなどを定義することで、これらの製品においての必要な唯一無二であり、そして再現性のある仕様決めを行います。
せっかくモノづくりとしての製品を定義しても再現性つまりその製品規格に従って、同じものが製造できるものでないと製品の仕様を定義したとは言えません。これは後々の検査の際にも必要ですが、ひとつひとつが異なるものであっては、それはバラツキにしかなりません。
そこで、そのバラつきがどこまで許容できるかを定義するために「公差」「条件」などを明確にしておきます。
これも当たり前のように感じますが、このバラツキの妥当性をしっかりレビューしておくことで製品規格がより明確となってきますので、正しくスペックを確認して定義することに留意していきましょう。
そして、これも当然のことですが、製品規格は要求仕様に記述されている項目や規格については同じものでないとスペックとの同一性は保たれませんので、良かれと思って数値を変更したりすることも製品仕様の改ざんにつながりかねませんので注意が必要です。要するに要求仕様は開発する手前に作成するスペックであり、製品規格はその製品を生産する際のスペックとして自社側が「このようなものを作ります」といった宣言書のようなものであることをイメージしておきましょう。
また、製品規格には環境性能や信頼性試験などの仕様が盛り込まれている必要があります。
もちろん、製品規格と分けて資料とすることも多いかと思いますが、いずれにせよ品質面においては両者をひとつにまとめて製品としての素性を明確にしていくことから、どのような環境性能を持たせるのか、そして耐久性を検証する上でどの程度の信頼性試験を行って製品を定義するのか明確にしておく必要があります。
良く見落としがちですが、この信頼性試験に関する試験方法、項目、試験条件、規格、検査方法などをルール化しておかなければ製品としての素性を品質システム上では定義したとは言えませんので、忘れないようにしておきましょう。
製品検査規格
ここで大切なことは、製品検査規格とは何か、そしてどのような位置づけなのかを知っておくことです。
製品検査規格は、製品の仕様が定まった際(つまり製品規格が作成された)、その製品をどのように出来栄えを確かめるかの検査仕様に関する資料となります。必要に応じて顧客に承認を得るケースも少なくありません。
出来上がった製品を中心に考えると、製品規格は製品を作り上げる際にどのようなものを作るかを定義し、製品検査規格は、作りあがった製品がどのような出来栄えかを定義するものとなります。このため、製品検査規格は製品規格に準じたもので、製品規格を制定する設計側の意図をくみ取った後で検査仕様を作り上げることから、順序が決まっています。
製品検査規格には、全プロセスからのインプットを鑑み、「生産時に行う検査スペック」、もしくは「生産したものを信頼性試験としてサンプリングして検査するスペック」の大きく分けて2種類の大項目として準備しておく必要がありますが、いずれの場合も先に示したように、製品規格を基にして作成して、生産現場に落とし込むものでないといけません。
生産時に行う検査仕様においては、製品規格を満足するために、製品仕様以上つまり厳しめのスペックが引かれることも中には存在するようですが、基本的には同一なスペックが望ましいでしょう。これは製品の要求仕様における同一性を定義する上で繁雑な処理をできるだけ排除する目的もあり、データ改ざんや誤った解釈での検査を防止するリスク低減につなげることも品質管理上は大切であるからです。
ただし、耐環境性能や耐久性などを鑑みた場合に公差マージンなどを考慮して、あらかじめ厳し目のスペックを定義しておき、製品がスペックとしてドリフトするケースを未然に設定しておくケースもあります。長期にわたって製品規格ならびに顧客要求を満足しうるための処置として、使用時に値する検査仕様においては、製品規格を考慮した形で設定を行いましょう。
(検査時に厳しく定義しておかないと、1年後、5年度など製品の保証期間などの長期にわたって、動作性能がドリフトしても製品仕様を担保させるためには、その相関を織り込んだうえでの製品検査が必要なケースもあるので…)
このため、製品検査規格においては、製品寿命を想定したうえで、その中でも製品規格を満足しうる検査仕様を策定しておく必要性があります。また、その策定に至ったエビデンスなども記録として残しておき、何をもって仕様の同一性を図っているのかを明確にしておく必要がありますので注意が必要です。
まとめ
このように、実際に製品の検査を行うため(検査成績書などを記録する)には、正しいプロセスを経て、製品規格と製品検査規格を策定しておくことが望ましいです。
一般的には、製品の同一性を担保するためには、顧客要求と合致した製品規格であり、そして製品検査規格においても顧客要求に合致したものを策定して検査しないといけないことは当然なことですが、できているモノづくり品質もあれば、そうでないモノづくり品質も実際には見受けられ、近年は品質不正につながる話題もあることから注意して取り組んでいきましょう。
たとえば、組み合わせたスペックとして動作的に問題はないので、スペックをわずかにオーバーしても勝手な解釈を施し、検査合格を行っていた…、検査台数をごまかしていたなど、それが昔からの慣例になっていた等、そういった事案もよく耳にします。これが結果的には市場で問題はなかったとしても、信頼関係を揺るがす行為であることは間違いありませんし、何よりも正しいモノづくりを行っているとも思えません。モノづくり品質は正しいプロセスで正しい認識でもって製品化して検査していくことを改めて認識していただければありがたいと思っています。
そのためにも信頼性試験での仕様定義も考慮して製品規格を構築しておく必要性があるということを理解して、これらの結果を記録することで品質マネジメントシステムとしても齟齬の無い活動ができていることを証明していきましょう。

