量産準備会議のイベントは、APQPのフェーズ4の締めくくりとして、新製品を量産ラインとして流動しても良いかどうかを見極めるため、必要な準備が出そろっているかを確認する重要なイベントとなります。このため新製品が「計画通りに」「安定して」「顧客の要求数量を」作れるかを確認していきます。
ここまで到達するためにはもちろん仕様管理をはじめとする設計構想やデザインレビューなどの設計審査、そして工程設計、製品検査規格などのプロセスならびに成果物も経て、モノづくりとしていよいよ生産できる段階に進んできたことを意味します。これらのプロセスを体系的にまとめたAPQPは以下にも記述していますので合わせてご覧いただけるとありがたいです。

はじめに
これまでの「顧客要求どおり(自社製品なら要求仕様どおり)」に設計や審査ができていることはもちろん、製品の信頼性が十分に担保されていることが前提となりますが、実際のモノづくり現場としては、これらが顧客要求の変更や修正などと相まって並行して進んでいることも数多く見受けられます。顧客によっては一定の品質基準として仕様を満足してからでないと量産準備に進めないケースもありますが、生産ライン設計においては事前に生産性の見極めとして、ラインタクトや作りやすさ、安全性、品質の確保などを考慮して進めておかなければなりません。
ISO9000や自動車部品関連での品質マネジメントシステムIATF16949などのQMSに関わる審査員の視点からしても、以下のような最低限必要となるエビデンスの項目を網羅して検討していることを示すことで、実務上「やっておくと監査での心証もよく、不適合リスクを下げられる」点での必須ポイントを整理して説明していきます。
必要なエビデンス
ここでは、量産準備段階としての最終結論としての最低限必要なエビデンスをまとめてみました。
もちろん水面下ではいろいろなサブタスクがありますし、製品や開発状況に合わせた取り組みも必要かと思いますが、整理すると概ねこのような内容を計画として準備していき、予定と実績を整理した計画書(予実管理:ガントチャート的なものが望ましい)の中で進捗させた結果をエビデンスとして記録しておくことが良いでしょう。
量産準備会議に必要なエビデンス項目一覧(例)
| カテゴリー | 項目 | エビデンスの内容(ポイント) |
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設計・工程計画 |
PFMEA(工程FMEA) | 最新のリスク分析結果。試作時の不具合が対策として繁栄されているか |
| コントロールプラン(CP) | 試作から量産への移行が反映された「量産コントロールプラン」 | |
| 作業要領書/検査基準書 | 現場の作業台に備え付けられる最新版。特殊特性の管理など明記 | |
| 評価・検証 | 信頼性試験計画 | 要求仕様に準じた試験計画とその結果/考察 |
| PPAP承認状況 | 顧客からのPPAP承認(PSW等)または暫定承認のステータス | |
| MSA(測定システム解析) | ゲージR&Rの結果。管理計画にある測定具がすべて検証済みか | |
| 初期工程能力調査(Ppk) | 特殊特性に対する統計的データの解析結果。目標値(1.67)への達否 | |
| 生産準備実態 | 生産試作結果(Run@Rate) | 量産と同じ設備/作業者/タクトタイムで連続生産した際の歩留まりと生産数 |
| 教育訓練記録 | 当該ラインに従事する作業者の力量認定。多能工表の更新 | |
| 治工具・予備品管理 | 治工具の保管場所、寿命管理、必要な予備品の確保状態 | |
| 導入対応 |
物流・梱包検証 | 指定の梱包形態での落下試験や、納入リードタイムの検証結果 |
| サプライヤー準備状況 | 購入部品などの部品供給能力と品質の最終確認結果 | |
| 緊急時対応計画の更新 | 設備故障や人手不足時、この新製品をどう守るかの手順 | |
| CFTメンバー更新 | これまで関わってきたCFT(クロスファンクショナルチーム)来歴の整理 | |
| 初期流動管理 | パイロット生産へ向けての管理項目とライン監視計画の立案 |
中でもこれらが順調に進まないケースもあるかと思います。仕様変更や何等かのトラブルで計画や成果物が大きく変更されるなどと言った状況も少なくありません。その際には予実管理やフォロー内容などの記録もこれらの計画の妥当性を示す重要な役割となりますので、正しく漏れなく記録しておくことが大切ですね。
実務のポイント
基本設計も終わった・・・試作においても性能・機能を担保できるような見込みも立った。ライン設計も一通り検討段階を終え、これなら量産ラインとしても構築してパイロット生産していこうか・・・という段階に量産準備というフェーズを完結させ、「量産してもいいよ」というジャッジを得るために安心して顧客に流動できるような体制を整えるための量産準備ですが、これらの実務上のポイントをいくつか抜粋して詳細に解説していきます。
コントロールプランとPFMEAとの整合性
これはコントロールプラン(CP:Control Plan もしくはQC工程図)を作成するときにも最も注意する観点であり、量産準備会議としての最も多い不適合項目のひとつにもなりますが、「PFMEA(工程FMEA)で特定したリスクがコントロールプランの管理項目に反映されていること」が最も重要なポイントのひとつになります。
また源流にて要求仕様図やDFMEA(設計FMEA)においても特殊特性などが整理されているケースにおいてもPFMEAでは懸念点をリスクとして分析していることが必要であり、このリスクについての検討が実際のライン生産においての管理ポイントとしてリンクしていることが品質保証上の重要ポイントとなります。
例えば、PFMEAで重要とした項目が、実際の生産ラインにて目視検査だけで終わるとなると、なぜ目視検査だけでOKなのか、なにかポカヨケ的な要素にて確実に重要な項目が確認できるしくみになっているのかが問われます。
このようにコントロールプランには顧客仕様⇒リスク分析⇒生産管理項目としての一貫性が必要となりますので注意しましょう。
また、近年では管理ポイントと管理タイミング、そして管理手法の明確化はもちろんのこと、緊急時ならびに異常時での処置対応について、誰が・何を・どこまで・いつまでに・どの順番でやるかを明確化することが求めらています。つまり不良が出たら連絡するとか、止める・直すだけの記述では不十分で異常の検出方法から処置対応としてのルール化がこのコントロールプランで管理することが必要となってきています。
もちろんこれらは別シートにて準じてそれを呼び出して明確にすることでも構いません。
初期工程能力と特殊特性
図面上の特殊特性に対して、統計的に安定している証拠が必要となります。このため、予備的工程能力Ppならびに工程能力指数Ppkの監視により、十分な管理範囲に対しての安定した特性を維持できているかを判断材料としてエビデンスとして記録しておかなければなりません。
このためには、一般的には、Ppk>1,67以上が量産を先行するためには必要とされていて、これはいわゆる管理範囲に対して、生産バラツキの標準偏差σに対して5σのマージンが必要であるからこそ1.67という数値の根拠が見いだせることになり安定生産の基本要求が満たされることとなります。
これが目標値レベルに到達していないとなると、どのような追加検査や全数選別を行うのかなどの品質保証上の担保の方法を考察するなど方策が必要です。このようにして「暫定対策」としての方向性を取り決めた上で、顧客との合意を行うなどをして量産移行に向けた対応を行っていくこととなります。
PPAPステータスの明確化
PPAP(Production Part Approval Process:量産部品承認プロセス)は主に自動車産業としてIATF16949の品質マネジメントシステムで使われる量産開始前に「この部品(新製品)は設計通り作れます」と顧客に証明するための一連の提出物であり、要求仕様通りの製品であること、工程が安定していること、品質管理の仕組みが整っていることなどの証明を行い、それを基にPSW(Part Submission Warrant:部品提出保証書)を提出してサインをいただくものです。
本来ならば、これらが十分出そろっていて顧客承認が取れていることがベストではありますが、「まだ顧客承認は取れていないが、生産は開始しなければならない」という状況は実務で多発します。
これらの場合には、顧客からの暫定承認(デビエーション等)の記録が会議資料に含まれている必要があります。これらの整合が取れていない場合は、量産製品としてのメジャー不適合となってしまうので注意が必要です。
そのため、量産準備におけるPPAP適用資料などは常に監視対象としてモノづくり品質においては重要な位置づけとなりますので顧客要求事項でどのようなことが要求されているかを確実に把握しておきましょう。基本的にはDFMEA/PFMEA、コントロールプラン、測定結果(寸法・機能・材料)、工程能力、外観評価、材料証明書、初品品質確認結果、サンプル部品などが相当し、これらをサマリーとしてPSWとして承認または承認却下として合意します。
生産試作での詳細分析
生産するにおいて、いきなり生産などと言ったことは行わず、多くがトライ生産を経て、パイロット生産として量産できるかの見極めを行うことでしょう。その際「目標数を達成した」だけではなく、「どれだけ目標数とのマージンがあるのか」「その時のダウンタイムの原因は何だっか」「不良品の内訳はどうだったか」さらに言えば目標数に到達できなかったことも想定しなければなりません。
これらの分析するために、Run@Rateというイベントとして、量産時と同じ条件で一定時間ラインを稼働させ、要求される生産能力(Rate)が安定して出せるかを検証するトライ生産を行うことが、よく行われます。その際の分析結果として、どのようなトライ結果であったのかの記録と安定生産へ向けた考察が行われたことの記録が残せるような成果物をアウトプットとして残しておきましょう。
また、ここで得られた改善点や知見などは、必ずPFMEAを通してコントロールプラン上にフィードバックできるしくみを作っておくと有効的です。
このようにして、本当にこのラインは毎時間○○個を安定して作れるのかという事を事前に証明することになってきます。これについては要求時に必要となるケースが多いですが、自主的に量産に進める上でやっておくと良いでしょう。
なお、大型機器では量産というわけには行かず、生産能力の安定化を図るフェーズが見当たらないケースも多々ありますので一概には言えませんが、これらの代わりとなる生産タスクの計画と実績の予実管理ならびにテストイベントの管理を経て対応予想を確実に進捗させることが、モノづくりの管理上のポイントとなってきます。
「現場視点」での教育訓練
これは、「座学をしました」と言った記録だけでなく、「作業要領書どおりに作れること」「実際にNG品を識別できるか」と言った有効性確認の結果(作業者認定)を記録しながら作業者習熟を図っている計画と実績を管理していることをエビデンスとして残しておくことが重要です。
特に重要な外観項目などで目視による判断が求められるケースでは作業者のMSA(測定システム解析)結果も必要となることに注意が必要です。
このように作業者習熟においては、PFMEAでリスク分析、コントロールプランで管理項目、そして作業要領書などで作り方・注意ポイントなどを一連の流れで作業者への理解ができる形への作業手順が落とし込まれて行きますが、この作業要領書において、しっかりと作りやすくて不具合品が出来にくい環境整備を行いながら指導していくことが重要となります。
そういう意味では現場リーダーに求められることは「やってみて」「言って聞かせて」「させてみせ」(ちょっと古臭いかな)が重要となってきますし、それによって作業上の問題点の把握や作業のしやすさを確認して「ほめてあげる」と言う形で現場視点から見ても作業者に「作業しやすい環境」も作ってあげなければなりません。
保守・保全計画の確定
新しい設備や金型、そして治工具類が配備されることとなりますが、これらに対して、いつ・誰が・どこを点検するのかのスケジュールが会議時点で決まっていることが重要となります。
これらは近年の品質マネジメントシステムでのTPM(全員参加の生産保全)の要求が厳しくなってきていることもあり、量産開始後の「壊れてから直す」というスタンスは認められないケースが多々あります。もちろん事後保全が悪いわけではありません。事後に起きた場合の対応処置を含めて計画として明確化されていれば問題ありませんが、必要な消耗品などは、ショット管理等のように計画的な運用や設備保全についても定期点検などを主軸に確実に運用できる(つまり総合能率的な指数に基づいた形で)安定生産を目指していることを常に監視し保守・保全活動を行えるしくみづくりが必要となってきます。
クロスファンクショナルチームの更新
クロスファンクショナルチームは、本来、要求仕様や構想段階にてプロジェクトとして営業・(経理)・設計・購買・生産技術・製造・品質管理・品質保証(サービス含む)などと言った横断型部門間連携でそれぞれの新製品に関わるメンバーをアサインしてモノづくりのチーム運営を行うことで組織されるものですが、これらが量産準備においては、製品を最終出荷として判断できる専門家としてのこれまで行ってきたアウトプットを整理する上でエビデンス整理の中核として機能する必要があります。
初期からの開発計画からメンバーに変更があるケースも少なくありません。そのメンバーの来歴や引継ぎ状況そして量産へ向けた対応としての計画どおりに遂行できているかの整合を示したエビデンスとして記録しておくことで、モノづくり品質が担保されていることの証明となります。
まとめ
量産準備会議というイベントは「不備を見つける最後の砦である」ことを認識しながら品質マネジメントシステムでの「欠陥の予防」を最大限に機能させていることを最重視してことがおわかりになったかと思います。
会議やその準備段階で問題がゼロであることよりも、実は「見つかった課題(Open Issue)に対して、いつまでに・誰が・どのように対策するかのアクションプランが明確になっていること」こそが生きている品質マネジメントシステムとして求められていることとして重要なのです。
最後に、これらは顧客要求事項に基づくものでもありますが、特に海外でのビジネスに関わる際には顧客固有要求事項(CSR)として独自のチェックリストなどが義務付けられているケースも少なくありません。その際はCSRに従った活動とエビデンスを記録しておく必要がありますので注意を払っておきましょう。
いかがだったでしょうか。単なる量産といってもいろいろなエビデンスとして成果物を残し、承認プロセスを経て量産へ向けてステップを進めることとなるわけです。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

